マイホーム購入資金の援助をお得に受ける方法
マイホームを購入する際、親御さんから援助を受けることができる方もいると思います。そうしたときにぜひ利用して欲しい制度が、直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の特例制度です。通常、親御さんからマイホーム取得のために援助されるお金は贈与税の対象になりますが、一定の金額までは非課税で援助を受けることができます。
親御さんからの援助は贈与税の対象
贈与税とは、個人から財産をもらったときにかかる税金です。1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額が110万円を超える場合には、贈与税の申告をしなければなりません(暦年課税制度)。
例えば、自分の父親からマイホーム取得のために500万円の援助を受けた場合は、48.5万円の贈与税を納めることになります。自分の父親(直系尊属)からの贈与税の計算には、特例税率が適用されます。
500万円ー基礎控除110万円=390万円
390万円✕特例税率15%ー控除額10万円=48.5万円
夫の父親から同様の援助を受けた場合、夫の父親は直系尊属ではないため、一般税率が適用され、贈与税は53万円になります。
500万円ー基礎控除110万円
390万円✕一般税率20%ー控除額25万円=53万円
マイホーム購入のために援助してもらった大切な資金。できれば税金を払うことなく、全額をマイホーム購入に充てたいですよね。直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の特例制度を利用すれば、一定の条件を満たした場合、最大1,500万円までの贈与について非課税となります。
非課税となる贈与額は、消費税の適用がされるかどうか、住宅の性能によって変わります。
令和3年4月1日から令和3年3月31日までにマイホームの新築等に係る契約をした場合の非課税限度額は次のとおりです。
1 消費税等の税率10%が適用されるマイホームの新築等
省エネ住宅等 1,200万円(1,500万円)
上記以外 700万円(1,000万円)
2 上記以外の場合
省エネ住宅等 800万円(1,000万円)
上記以外 300万円(500万円)
( )内は令和3年税制改正の内容を踏まえた限度額になります。
この制度は、贈与税の暦年課税制度とも併用することが可能なので、最大1,610万円までの贈与について非課税とすることができます。
非課税制度を利用するための要件
節税効果の高い制度ですが、利用するためには一定の要件を満たす必要があります。
特例を受けるための主な要件は、次のとおりです。
・贈与を受けたときに、贈与者の直系卑属(子や孫)であること
・贈与を受けた年の1月1日において、20歳以上であること
・贈与を受けた年の年分の所得税に係る合計所得金額が2,000万円であること
・贈与を受けた年の翌年3月15日までにマイホーム購入のための贈与を受けた金額を全額充てて家屋の新築等をすること
・贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住または居住することが確実であると見込まれること
・家屋の登記簿上の床面積が50㎡以上240㎡以下であること
なお、令和3年税制改正において、贈与を受けた年分の所得税に係る合計所得金額が1,000万円以下である場合に限り、床面積要件の下限が40㎡以上に引き下げられます。
非課税の特例の適用を受けるための手続き
この特例の適用を受けるためには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、非課税の特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書に行っての書類を添付して税務署に申告する必要があります。この申告は、納付税額がない場合でも行わなければなりませんので、注意が必要です。
最大50万円もお得!すまい給付金について
マイホームの購入に関するお得な制度では、住宅ローン控除があげられますが、もうひとつお得な制度があります。それが今回ご紹介する、すまい給付金です。マイホーム購入には多くの支出を伴うため、購入資金を補填できる制度はとても大事です。内容をよく知っておきましょう。
すまい給付金とは
すまい給付金は、消費税率引上げによる、マイホーム取得者の負担を緩和するために創られた制度です。住宅ローン控除も、マイホーム取得の負担を緩和する制度ですが、住宅ローン控除の場合、支払っている所得税等の税金を控除することによって負担の緩和を図るため、収入が少ない世帯では、税金の支払いも少なく、緩和の効果も少なくなってしまいます。また、住宅ローンを利用しないでマイホームを取得した人は、住宅ローン控除をまったく利用することができません。
消費税増税に伴い、住宅ローン控除の拡充がなされましたが、上記のように住宅ローン控除の恩恵を十分に受けることができない人もいます。
こうした人たちの消費税増税によるマイホーム購入の負担を軽減するために、すまい給付金が創設されました。
すまい給付金の支給額
すまい給付金は、収入によって給付額が異なります。
年収の目安
450万円以下 50万円
450万円超525万円以下 40万円
525万円超600万円以下 30万円
600万円超675万円以下 20万円
675万円超775万円以下 10万円
(出典:国土交通省の運営するサイト「すまい給付金」より)
上記は、夫婦(妻の収入はなし)および中学生以下以下の子ども2人のモデル世帯が、住宅ローンを利用して、マイホームを取得する場合の夫の収入額の目安です。
扶養親族の数やお住まいの地域などにより異なります。すまい給付金のホームページで給付額のシュミレーションが可能です。
支給条件
すまい給付金の支給を受けるためには、消費税10%の適用がある住宅を購入したこと、床面積が50㎡以上であること、第三者機関の検査を受け、一定以上の品質の住宅であることが確認できることが必要です。
なお、床面積については、注文住宅の場合は2020年10月1日から2021年9月30日まで、分譲住宅等の場合は、2020年12月1日から2021年11月30日までに契約が締結されている場合は、40㎡以上に緩和されます。
すまい給付金の申請方法
申請には、すまい給付金事務局指定の給付申請書のほかに、住民票の写し、建物の登記事項証明書、個人住民税の課税証明書、不動産売買契約書などの確認書類が必要です。
給付申請書は、すまい給付金制度のホームページから入手可能です。
申請期限は住宅の引き渡しを受けてから1年3ヶ月以内です。
なお、住宅事業者等が申請手続きを代行することも可能になっています。
マイホーム購入の際は、すまい給付金の支給が受けられるか購入する業者にしっかり確認しることを忘れないようにしましょう。
お得な住宅ローン控除、マイホームを購入したら忘れずに!
マイホームを購入したら必ず利用したい制度に住宅ローン控除があります。
住宅ローン控除は、毎年の所得税等から上限40万円の税額控除を受けることができる制度です。以前は控除期間10年でしたが、控除期間の特例措置により、消費税10%で取得して、2019年10月1日から2020年12月31日までに入居した場合、13年間に延長されています。
とってもお得な住宅ローン控除、制度についてしっかり理解しておきましょう。
住宅ローン控除の基本
住宅ローン控除(正式名称:住宅借入等特別控除)は、住宅ローンを利用してマイホームを購入した人で、一定の要件を満たしている場合に、住宅ローンの年末残高の一定の割合に相当する金額(上限40万円)を、毎年の所得税から控除または住民税から減額する制度です。
住宅ローン控除は、支払う税金が少なくなる税額控除という制度であるため、支払う税金以上は控除されない点に注意です。
税額控除の計算方法
控除される税額は、次の算式で計算されます。
1年目から10年目まで
住宅ローンの年末残高✕1%=控除額(上限40万円)
11年目から13年目までは以下の計算結果のうち、少ないほうの金額
1 建物価格(上限4,000万円)✕2%✕1/3
2 住宅ローンの年末残高✕1%✕1/2
例えば、住宅ローンの年末残高が3,000万円であれば、控除額は30万円です。
所得税を35万円支払っていれば、控除額30万円が丸々所得税から控除されます。
所得税の支払いが30万円未満の場合は、翌年の住民税が減額されます。
ただし、住民税からの減額は、136,500円が上限になります。
よって、毎年の控除額は、「上限40万円」「住宅ローンの年末残高の1%」「所得税
+住民税(上限136,500円)」のうち、最も少ない金額になります。
適用を受けるための要件
住宅ローン控除を受けるための主な要件は次のとおりです。
1 マイホームを取得した日から6ヶ月以内に居住して、控除を受ける年の年末まで住んでいること
2 控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下であること
3 マイホームの床面積が50㎡以上であること
4 住宅ローンの返済期間が10年以上であること
5 居住した年やその前2年・後3年の計6年間に居住用財産を譲渡した場合の特例を受けていないこと
住宅ローン控除を受けるためには、現に居住していることが要件となります。そのため、転勤などで居住しなくなると、居住していない間は控除を受けることができなくなるので、転勤の可能性がある場合は気をつけましょう。なお、戻ってきて居住を再開した場合は残りの年数分の控除を受けることができます。
マイホームの床面積に関する要件は、登記簿に載っている面積のことをいいます。物件の広告などに載っている広さとは異なることがありますので注意してください。
10年以上の住宅ローンの借入であればどこからの借入でも適用されるわけではありません。原則、金融機関等からの借入に限られ、親族などからの借入金は対象外になります。また、勤務先からの借入のうち、0.2%未満の利率で借り入れた場合は適用対象外です。
住宅ローン控除を受けるための手続き
住宅ローン控除を受けるための手続きは、最初の年と2年目以降では異なります。
控除を受ける最初の年は、自分で確定申告をする必要があります。
確定申告書に、登記事項証明書、不動産売買契約書、ローン残高証明書など必要な書類を添付して、税務署に提出します。提出後2週間ほどすると、指定した銀行口座に税務署から還付金が振り込まれます。
2年目以降については、会社で年末調整をすることによって、住宅ローン控除をうけることができます。
年末調整の対象にならない会社員の方や自営業の方は、2年目以降も確定申告の必要があります。
住宅ローン控除の延長と見直し
令和3年度の税制改正によって、2021年12月までだった住宅ローン控除適用期間が、一定の要件のもと、2022年12月まで延長されることが明らかにされました。
延長可能な住宅の要件は、住宅ローン控除の適用要件を満たしていること、2021年1月1日から2022年12月31日までの間に住み始めること、注文住宅の場合は2020年10月1日から2021年9月30日まで、分譲住宅等の場合は、2020年12月1日から2021年11月30日までに契約が締結されていることとされています。
また、控除期間13年分の措置の延長分については、所得制限を設けたうえで、床面積要件を50㎡以上から40㎡以上に緩和されます。
40㎡以上で住宅ローン控除を受けることができるのは、合計所得金額1,000万円以下であることが条件になります。
長期間にわたって減税の恩恵を受けることができる住宅ローン控除を利用して、賢くマイホームを手に入れましょう。
住宅ローンについて知っておこう(住宅ローンの借入先)
住宅ローンをどこで借りるかはとても重要です。借入先によって、金利や選べる支払方法が違ったり、保証料や繰り上げ返済にかかる手数料がかからない場合もあります。
マイホーム購入時に不動産会社から提携ローンを紹介されることもあると思います。提携ローンは審査がスムーズであったり、金利の優遇があったりする場合がありますが、借り入れる金融機関によって、支払総額に数百万円の違いが出る可能性もあります。
そのため、少しでも有利で自分に合う住宅ローンを選ぶためにも、借入先についての基礎的な知識を押さえておきましょう。
住宅ローンは大きく分けて2種類
住宅ローンは、住宅金融支援機構などが行う公的ローンと銀行などの民間金融機関が行う民間ローンの2つに分けられます。
住宅金融支援機構は、2007年4月に住宅金融公庫を引き継いだ独立行政法人で、民間金融機関と提携したフラット35の取り扱いが主要業務になっています。
公的ローンには、勤務先で財形貯蓄をしている人が利用できる財形住宅融資もあります。
住宅ローンを借りる際は、フラット35、財形住宅融資、民間ローンから選ぶことになります。それぞれの特徴をみてみましょう。
フラット35の特徴
・借入額100万円以上8,000万円以内 住宅購入価額の100%まで
・返済期間最長35年
・保証人、保証料不要
・繰上返済手数料無料
・団体信用生命保険は任意加入
フラット35で扱う金利タイプは固定金利のみのため、固定金利での借入を考えている方は検討の余地があります。
また、繰上返済をする際の手数料が無料である点もポイントです。インターネットを利用した手続きをする場合、10万円以上から返済可能です。
団体信用生命保険への加入が任意である点もポイントです。団体信用生命保険は、住宅ローンの支払い中に死亡等で支払いができなくなった場合、生命保険金で住宅ローンの残高が完済される保険です。民間ローンでは原則、加入が融資条件であるため、保険に加入できない方、他の生命保険等でリスク対策をしたい方には大きなメリットになります。
他に、省エネルギー性や耐久性などに優れた住宅を取得する場合に、フラット35の適用金利を一定期間引き下げる制度(フラット35S)などもあります。
なお、フラット35を利用するためには、住宅金融支援機構が定めた技術基準をクリアした物件であることや、床面積の定めなど、一定の条件があります。
財形住宅融資の特徴
・財形貯蓄をしている人しか利用できない
・5年ごとに金利が見直される5年固定金利型、上限下限の設定なし
・限度額は、物件価格の90%以内で、財形貯蓄残高の10倍以内(最高4,000万円)まで
・返済期間最長35年
・適用金利は申し込み時点のものが適用される
・当初5年間0.2%の金利引下げの特例措置がある
・他のローンと併用可能
財形住宅融資は、財形貯蓄を1年以上続け、借入申込日前2年以内に財形貯蓄の預入れを行い、かつ、申込における貯蓄残高が50万円以上あるなどの条件を満たした人が利用できる融資です。
財形貯蓄には、一般財形貯蓄、財形年金貯蓄、財形住宅貯蓄の3種類があり、いずれかを利用している必要があります。
なお、この貯蓄はお勤めの会社に財形貯蓄制度がないと利用することができません。
特徴的なのが、適用金利は申し込み時点ではなく、融資実行時点の金利となるのが一般的であるところ、財形住宅融資の場合は、申し込み時点の金利が適用される点です。申し込み時の金利となるため、融資実行時までに金利が上がってしまうリスクを避けることができます。
また、中小企業にお勤めの方や子育て世帯には、当初5年間0.2%の金利引下げの特例措置が設けられています。
注意したい点は、金利の見直しが5年ごとにある点とその見直し金利の上限が設定されていない点です。2021年4月現在では年0.7%前後ですが、5年後に金利が急上昇した場合、利息の支払いが想定以上に増加することとなります。
財形住宅融資を利用する場合、短期間での借入、もしくは少額の借入をおすすめします。
他の住宅ローンとの併用も可能なので、フラット35と併用して、金利上昇リスクに対応しつつ、金利低下のメリットを受けるという使いかたもできます。
民間ローンの特徴
・さまざまな金利タイプの選択が可能
・信用保証会社の保証が必要
・団体信用生命保険への加入が必要
銀行などの民間金融機関が独自に扱っている住宅ローンで、融資条件は金融機関ごとに異なります。公的ローンに比べると物件に対する制限が少なく、申込者本人の就業状況や収入状況などが重視される傾向にあります。
金利タイプは変動金利、固定金利、固定金利選択型から選ぶことができるため、変動金利を考えている方は、銀行等からの借入を検討することになります。
原則として民間ローンの場合は、団体信用生命保険への加入が融資条件でであるため、保険に加入できない場合は、融資が受けられないのが一般的です。
それぞれの特徴を理解して、最適な住宅ローンを選択しよう
住宅ローンといっても、借入先によって、様々な違いがありますし、メリット・デメリットもあります。住宅ローンの支払いは長期に渡ります。借入先を選ぶ際は、自分の選びたい金利タイプや支払方法があるのか、適用金利はより有利なものか、手数料や保証料はどの程度かかるのかなど、しっかりと確認して納得したうえで選ぶようにしましょう。
住宅ローンについて知っておこう(2つの返済方法)
住宅ローンの返済方法には、元利均等返済と元金均等返済の2種類があります。
支払い方法によって、毎月の返済負担額や総返済額に違いがありますので、2つの返済方法の特徴を良く理解して、自分たちのライフプランに合った支払い方法を選択しましょう。
元利均等返済
元利均等返済は、元金と利息をあわせた返済額が毎月一定になる返済方法です。
返済額が一定のため、返済計画が立てやすい点が特徴です。返済当初は支払の割合が元金よりも利息のほうが多いですが、返済が進むにつれて、毎月の返済額に占める元金の割合が増えていきます。
元金均等返済
元金均等返済は、返済額に占める元金の割合が一定になる返済方法です。返済当初は月々の返済額が多いため返済負担が大きいものの、返済が進むにしたがって、月々の返済額が着実に減っていくのが特徴です。
元金均等返済については、取り扱いがない金融機関もあるため注意してください。
どちらを選ぶべきか
2つの返済方法のうち、どちらを選ぶべきでしょうか。それぞれのメリット・デメリットを確認しておきましょう。
元利均等返済
メリット
・毎回の返済額が一定のため、返済計画が立てやすい
・元金均等返済と比べて、返済開始当初の返済額が少ない
デメリット
・借入条件が同じである元金均等返済と比べて、総返済額が多くなる
元金均等返済
メリット
・毎回の返済額が、返済が進むにつれて少なくなる
・借入条件が同じである元利均等返済と比べて、総返済額が少なくなる
デメリット
・返済開始当初の返済額が多くなり、毎回の返済負担が大きい
・借入の審査の際、必要な収入が高くなるため、借入可能額が少なくなることがある
元利均等返済のほうが、元金均等返済よりも返済の管理がしやすいものの、毎回の支払いに占める元金返済の金額が、元金均等返済よりも少なくなるため、利息の支払いが増え、結果的に総返済額が増えてしまいます。総返済額を少なくするという点では、元金均等返済のほうがお得になります。
支払い方法による返済額の比較
前提条件 借入元金 3,000万円 返済期間35年 金利1.5%(固定)
元利均等返済の場合
毎回の返済額 91,855円(最終回のみ91,762円)
総返済額 38,579,100円
うち利息分 8,579,100円
元金均等返済の場合
初回の返済額 108,927円
16年目 91,338円
最終回 71,757円
総返済額 37,893,237円
うち利息分 7,893,237円
同じ条件のもとで比較すると、元金均等返済のほうが、利息685,863円分少なくなります。
また、元金均等返済の16年目を迎えると、元利均等返済の返済額と同程度となり、以降の毎回の支払額が減少していきます。
元金均等返済を選択した場合の支払総額抑制効果は、利率が高いほど効果を発揮しますが、その分返済初期の毎回の支払額が増加する点に注意が必要です。
どちらを選ぶかは今後のライフプランとの兼ね合いで決めよう
2種類の支払方法の比較から、次のような特徴がわかります。
・当初の支払額は元金均等返済のほうが多い
・返済期間が進むと、ある時点から、元金均等返済のほうが毎回の支払額が少なくなる
・総返済額は元金均等返済のほうが少なくなる
トータルの返済額が少ない元金均等返済を選択しようと思うかもしれませんが、元金均等返済は、元利均等返済よりも毎回の返済が多くなりがちです。月々の返済が負担になるため、その分貯蓄がしづらい時期になるでしょう。毎月の支払額が元利均等返済と同程度になるのも数十年先のことになります。10年以内くらいの近い将来に子どもの教育費のピークを迎えて支出が多くなりそうな方や、転職や独立を考えていて、一時的に収入が減少しそうな方には、あまり向いていない支払い方法です。
一方で、子どもが幼く、教育費のピークが15年くらい先であるような家庭であれば、子どもの教育費がかかる頃には、住宅ローンの返済が進み、毎月の返済の負担も減少して、バランスのよい家計になっていると考えられます。
支払金額の損得も大事ですが、もっとも重要なのは、家計に無理の生じない返済方法を選択することです。共働き世帯であれば、毎月多くの返済が可能かもしれませんが、子どもが生まれる可能性や、妻の育児による収入減少等もあり得ます。
住宅ローンの支払方法は、今後のライフプランとよく照らし合わせて、自分たちに合ったものを選択するようにしましょう。
住宅ローンについて知っておこう(住宅ローン金利)
マイホームを購入する際、多くの人が利用するであろう住宅ローンは、最も金利が低いローンであるものの、借入額が大きく、返済期間も長いため、支払う利息は多額になります。
例えば、4,000万円を固定金利1.5%で借りて35年で返済(元利均等返済)した場合、返済総額は約5,143万となり、利息は約1,143万円になります。
住宅ローンの返済額は、「金利」「借入金額」「返済期間」の3つの要素で決まります。したがって、「低金利」「少ない金額の借入」「短期間での返済」を目指すことにより、利息負担を軽く、総返済額を少なくすることができます。
今回は、3つの要素のうちのひとつ、金利についてみておきましょう。
住宅ローンの金利は大きく分けて2種類
住宅ローンの金利には大きく分けて固定金利と変動金利があります。固定金利選択型は変動金利の一種です。
固定金利
固定金利は、借り入れたときの金利が返済の最後まで変わらない金利です。そのため、毎回の返済額が変わらず、借入時に元金と利息の総返済額が確定するため、計画的な返済が可能です。また、金利が低いときに住宅ローンを組むと、その後金利が上昇したとしても、低い金利が返済終了まで続くメリットがあります。ただし、次の変動金利に比べると金利が高めであるため、低金利が続いていると、変動金利に比べて多くの利息を支払うこととなります。
変動金利
変動金利は、市場金利の変動に伴って、一定期間ごとに適用金利が見直される金利です。適用金利は半年ごとに見直しがされますが、その都度返済額が見直されるわけではなく、毎月の返済額は5年ごとに見直しがされます。見直しがされる間は、返済額に占める利息と元本の割合が変更されるため、金利が上昇した場合、利息の支払いが多くなり元本の返済額が少なくなる、あるいは元本がまったく減らないという状態になります。
変動金利は当初の金利が低く設定されていますが、金利が変わってしまうため、返済総額が最後まで確定しません。金利が下がっているときは、返済額が少なくなるメリットがありますが、金利が上昇すると返済が増加するデメリットがあります。
固定金利選択型
固定金利選択型は、借入から3年、5年、10年など一定期間は金利が固定されて、その期間が終わると金利が見直しされるタイプの変動金利の一種です。
どの金利を選択するべきか?
固定金利と変動金利は上記のとおり、メリット・デメリットが存在します。
それぞれの特徴を理解して、自分たちにあった金利を選択することが重要です。
固定金利が向いている人
・計画的に返済したい人
・返済額増えるリスクを取りたくない人
変動金利が向いている人
・借入額が比較的少ない人
・収入の増加が見込める人
・借入当初にたくさん返済したい人
・繰り上げ返済をする予定の人
・金利が上昇したときに対処できる人
固定金利選択型
・ある一定期間は教育費などと重なるため、支払い額は一定にしておきたい人
住宅ローンの金利の選択は、ライフプランにも関わる重要なものです。金利について理解を深め、今後の生活を見据えた金利選択をしましょう。
この家は買える?マイホームの購入予算を知ろう
マイホーム選びの重要な条件のひとつである購入予算。漠然と予算を決めていても、予算オーバーの物件に目がいってしまうこともあると思います。
そうしたときでも、自分たちが購入できるマイホームの購入金額の目安がわかっていれば、判断に迷うことも少なくなります。
今回は、自分たちが購入できる物件価格を計算する方法をお伝えします。
購入可能額は、頭金+住宅ローン借入額で決まる!
マイホームの購入可能額は、物件の購入時に支払う頭金と毎月返済していく住宅ローンの借入額を目安にします。
頭金を多めに支払えば住宅ローンの借入額を少なくすることができますが、貯蓄のすべてを頭金にすることは大変危険です。
病気や怪我、失業などのいざというときに必要となる生活予備費と、教育費や自動車購入費など将来のための貯蓄は残しておきたいところ。
生活予備費は、福利厚生の手厚い会社員であれば半年分程度、派遣社員や自営業者であれば1年分程度を見積もっておくと安心です。
頭金は物件価格の2割程度を目安に、購入諸費用や手元に残すお金とのバランスを考えながら決めましょう。
頭金=貯蓄−購入諸費用−生活予備費−将来のための貯蓄
次に、住宅ローン借入額は、毎月無理のない返済が可能なローン返済額をもとに決めていきます。
現在、家賃を支払っている方の場合であれば、支払っている家賃から購入後にかかる維持費を引いた金額を目安にします。この方法は、現在の家賃負担額とマイホーム購入後の負担額が大きく変わらないため、購入後に支払いが難しくなるという不安が少なくなります。
購入後にかかる維持費は、固定資産税や火災保険料、マンションを購入した場合の管理費、修繕積立金、駐車場代などです。購入物件や立地により変わりますが、2万円から3万5千円程度を見込みます。
マイホーム購入のために毎月貯金をしている場合は、その金額を毎月返済額にプラスしても構いません。
毎月返済額=現在の家賃+物件購入のための貯金−購入後の維持費
例えば、月10万円の家賃を支払いつつ、マイホーム購入のために毎月2万円の貯金をしている場合、購入後の維持費を3万円で見積もると、毎月返済額は、9万円になります。
9万円=10万円+2万円ー3万円
住宅ローン金利1.5%(固定)で、35年返済の場合、毎月9万円を返済できるのであれば、約2,940万円の住宅ローンを借りても返済することができます。
毎月の返済額別借入可能額
◯利率1.5% 返済期間30年
8万円→2,318万円
9万円→2,608万円
10万円→2,877万円
11万円→3,188万円
12万円→3,477万円
◯利率1.5% 返済期間35年
8万円→2,612万円
9万円→2,940万円
10万円→3,265万円
11万円→3,593万円
12万円→3,919万円
頭金として支払える金額と住宅ローンの借入可能額を足し合わせることにより、購入できるマイホームの目安が分かります。
ただし、気をつけていただきたいのが、ここで確認できる物件の価格は、現在の生活に照らして無理のない返済が可能な物件価格である点です。
住宅ローンの支払いは長期に渡ります。返済中に子どもの教育費がかさんだり、病気や怪我による収入の減少に見舞われることもあるかもしれません。現在の購入可能額を確認するとともに、長期のライフプランとも照らし合わせて、無理のないマイホーム購入予算を計画しましょう。