新婚夫婦が知っておきたいお金のはなし

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日常生活にも活かせる行動経済学

近頃、書店に行動経済学に関する書籍が増えているように感じます。

行動経済学とは、人は経済行動に対して合理的な存在であると考えている伝統的な経済学に対して、人は非合理的な意思決定も行う存在であると考える学問のことです。

 

行動経済学は経済学的な知見のみならず、人の心、すなわち心理学的な側面も併せ持った学問であるところが、最大の特徴です。

 

そのため、行動経済学で語られる様々なバイアスは、自らの生活に置き換えながら考えると、とても興味深く、感覚的に理解しやすいものが多いです。

 

以下では、日常生活でも活かせるものをいくつか紹介します。

 

1 保有効果

人は何かを保有したとき、保有したものに高い価値を感じて手放したくないと感じるようになる

 

形のある物体だけではなく、地位、利権、権力など無形のモノにも働く。

 

1−2 損失回避

損をするなど、マイナスの刺激に対して、得のようなプラスの刺激より敏感に反応し、無意識に損失を避けようとする

 

同じだけの得と損では感じ方は2倍以上になる

 

1と1−2は密接な関係にある

 

自分の持ち物を失うことは、損失と考える。失ったときの大きな不満や悲しみを避けようとする。→保有するモノの価値を極端に高く感じることにつながる

 

2 イケア効果

自分が関与する対象を高く評価する気持ち

自分が努力して犠牲を払った結果や達成した目標を高く評価したくなる

 

家庭菜園の野菜、DIYした家具、手料理など

 

3 ザイアンス効果=単純接触効果

何度も見るものを好きになる

ある対象への単なる接触の繰り返しによって、その対象への好意度が高まる効果がある

 

4 サンクコスト効果

費やしたことがもったいなくてやめられない心理

費やした時間、お金、労力など、失ったコストは戻ってこないが、これらを無駄にしたくないという意識が働く

→「回収不能となった投資費用」

 

未来の行動を判断する際、サンクコストは気にするべきではない。

しかし、多くの人はサンクコストに引きづられて正しい判断ができない。

サンクコストが無駄になるのが嫌で、損をすることがわかっていても後には引けないと感じる。結果、損が拡大する。

 

5 機会費用の軽視

もしやっていなかったら、という仮定を避け続ける心理。

ある選択を行うことで失った(選ばなかった)ものの価値や、もし選んでいたら得ていたはずの利益のこと。

 

6 現状維持バイアス

未知なもの、未体験のものを受け入れず、現状のままでいたいとする心理的バイアス

変化による損失を避けようとして、現状を維持。未知のリスクを避ける。



いかがでしたでしょうか。ご自分の生活上でも当てはまるものがあったのではないでしょうか。

上記の要素が重なると例えば、モンストやポケモンGOなどのソーシャルゲームにハマって抜け出せなくなる要因となります。

 

生活する上では、毎日が意思決定の連続です。中には無意識のうちに決断していることもあると思いますが、決定する際の一瞬で構いませんので、自分の決定は非合理的なものになっていないか立ち止まって考えてみると、よりよい選択ができるかもしれません。

【初めての資産運用】自分のリスク許容度を知っておこう

株式、不動産、外貨や仮想通貨などは、日々のニュースで価格の変動を見聞きすることも多いため、新たに投資を始めてみようと考えている方もいらっしゃると思います。

 

資産を増やすためには、金融商品への投資は必要不可欠です。しかし投資は資産を減らしてしまう可能性もあります。投資をするということは、リスクをとって自身の望むリターンを得ることだからです。

 

リスクの低い商品に投資をすれば、大きく資産を増やすことはできませんが、大きく資産が減ってしまうことも少なくなります。

逆に、リスクの高い商品に投資をすれば、大きく資産が増える可能性がありますが、資産を失ってしまう可能性も高まります。

 

このように、リスクとリターンは表裏一体の関係にあります。

 

それでは、投資する商品を選ぶ際に、リスクとリターンどちらの面を重視したほうがよいのでしょうか。

 

一般的に、人は利益を得るよりも損失を避ける行動をとります。そのため、リスク許容度と呼ばれる、自分がどの程度のリスクに耐えることができるのかを把握することが投資商品や銘柄選びで失敗しにくくなります。



リスク許容度にかかわる7つのポイント



金融機関のホームページには、無料でリスク許容度を診断できるツールが公開されています。

診断をする際にポイントとなるのは、主に次の7つの項目です。

 

1 投資経験

2 年齢

3 家族構成

4 年収

5 資産状況

6 性格

7 目標設定

 

ある程度の投資経験があれば、急な市場の変動に対しても、パニックにならずに冷静な投資を継続することができるため、リスク許容度は大きくなります。

 

年齢が若い方であれば、仮に投資で失敗したとしても、その失敗を取り返すための時間的余裕があるため、リスク許容度は大きくなります。

逆に50代以降の方は、10数年後くらいには退職し、老後生活が開始するため、リスク許容度は小さめになります。

 

配偶者の有無、子どもの人数、年齢はリスク許容度に大きな影響を与えます。子どものいない共働き世帯であれば、リスク許容度は大きくなりますし。子どもがいるのであれば、今後の教育費の目安を考えてリスク許容度を小さめに考えると無難です。

年収が高ければ、一般的に投資へ回すことができる資金が多くなりますし、損失が発生した場合でも、損失をカバーしやすいため、リスク許容度は大きくなります。しかし、年収が高いからといっても、毎月の生活費がカツカツな状態では投資に回す余力はあまりないと考えられますので、あくまでも、「収入ー生活費ー教育費などの必要な貯蓄」の余力でリスク許容度を考えます。

 

資産が多いほど、投資で失敗した際の損失をカバーしやすいため、リスク許容度は大きくなります。

 

性格もリスク許容度に大きく影響します。例えば日々の値動きが気になってしまって、会社のトイレで何度も株価を確認してしまうような方はリスク許容度を小さくしたほうがよいです。

 

自分のライフプラン上、必要は資産額がわかっていれば、その金額に合わせてリスク許容度を設定します。



投資を始めるまえに自分を知ろう

 

投資を始めようと考えると、何に投資しようか迷ってしまいますが、まずは自分自身を知ることによって、投資商品を選ぶための基準を確認しておきましょう。

【初めての資産運用】金融商品のリスクとリターンを知っておこう

投資を始める上で必ず知っておきたいことは、金融商品のリスクとリターンについてです。リスクの高い商品ばかりに投資をしてしまうと、資産を増やすことができる可能性が高くなりますが、急な価格変動によって大切な資産を失ってしまう可能性も高まります。

 

一方で、リスクを避けすぎて、すべての資産を預貯金などで運用してしまうと現在の超低金利の状態では資産を増やすことはできません。

 

こうしたことから、投資を始めるうえで、リスクとリターンの関係をよく理解しておく必要があります。



金融商品のリスクとリターンとは

 

どのような金融商品であってもリスクとリターンがあります。

リターンというのは、金融商品に投資した場合の得られる利益のことを言います。

リスクは一般的には「危険なこと」いう意味で使われますが、投資の世界では、リターンの振れ幅のことを指します。

 

例えば、以下の商品の場合、商品Bのほうがリスクが高いと言えます。

 

商品Aおよび商品Bを100円で購入

・商品Aは110円まで値上がりもしくは90円まで値下がりする

・商品Bは150円まで値上がりもしくは50円まで値下がりする

 

リスクとリターンには以下のような関係があります。

・リスクが大きい金融商品ほどリターンが大きくなる(ハイリスク ハイリターン)

・リスクが小さい金融商品ほどリターンが小さくなる(ローリスク ローリターン)

 

金融商品によってリスクとリターンは異なり、次のような関係でリスクとリターンが大きくなっていきます。

 

預貯金→国内債券→外国債券→国内株式→外国株式

 

投資信託は投資対象によってリスクとリターンが異なります。また、ローリスクハイリターンな金融商品は残念ながらありません。



金融商品の4つのリスクとは

 

金融商品のリスクには「信用リスク」「価格変動リスク」「カントリーリスク」「為替変動リスク」の4つがあります。

 

信用リスク

債券などを発行する国や企業が財政難や経営不振などの理由から、元本や利息をあらかじめ決められた条件で支払えなく可能性のことで、「デフォルトリスク」とも呼ばれます。株式に投資した場合でも、投資先が倒産する可能性があるため、信用リスクがあります。

 

価格変動リスク

購入した金融商品の価格が変動する可能性です。株式は市場の需給により日々変動します。債券も償還を待たずに途中で売却する場合は市場価格により変動します。

 

為替変動リスク

為替レートが変動する可能性です。外国通貨や外国債券、外国株式等に投資している場合、購入したときよりも円安になればプラスになり収益を得ることができますが、円高になるとマイナスになり収益が減ることになります。

 

カントリーリスク

金融商品と関係する国や地域の政治や経済状況の変化により、市場が影響を受けて資産価値が変動する可能性のことです。

 

自分にあった適切なリスク管理の必要性

 

資産運用を考える場合、リスクを負わなければリターンは上がりません。しかしながら、リスクを取れば高いリターンが保証されているわけではないことも理解しておく必要があります。

 

自分に必要なリターンと取れるリスクを加味しながらいくつかの投資先を選び、分散投資で少しでもリスクを減らしながら、投資を継続していくことが大切です。

産休・育休中の社会保険ってどうなるの?

毎月の給料から天引きされている健康保険料と厚生年金保険料。産休や育休を取得すると、会社からの給料は支払われなくなりますが、これらの社会保険料についてはその期間の納付が免除されます。保険料の支払いが免除されるのは嬉しいですが、保険が使えなくなってしまったり、将来の年金額が少なくなってしまうといったデメリットはないのでしょうか。

今回は育児休業中の社会保険料の免除制度について説明します。

 

産休・育休中の社会保険料免除のポイント

 

産前産後休業期間および育児休業期間(満3歳まで)については、それぞれの休業期間中に事業主が年金事務所に申し出ることにより、被保険者、事業主とも健康保険・厚生年金の保険料が免除されます。

 

月の途中で育児休業が開始、終了した場合は、開始した月から終了した前の月までが対象になります。

 

健康保険料の保険料が免除されている期間中であっても健康保険の資格は保持され、医療サービスを通常どおり受けることができます。

 

厚生年金の保険料が免除されている期間については、保険料を納付したものと扱われるため

、将来の年金が減額されることはありません。



産休・育休中はどうしても収入が減ってしまうので、社会保険料の免除の恩恵はかなり大きいものになります。

例えば、健康保険料1万円、厚生年金保険料2万円の自己負担をしている場合、産休・育休期間を合わせて1年間取得したとすると、社会保険料を36万円免除されることになります。

 

社会保険料の免除については申請が必要ですので、お勤め先に申請方法をしっかりと確認して万全の体制で出産に臨みましょう。

知っておきたい、子どもの医療費助成制度

子どもが小さいうちは、よく風邪を引きがちで、活発な子どもはケガがつきものです。そのため医療機関にかかる機会も増えていきます。病気やケガで健康保険を利用して診療を受けると自己負担分の支払いをする必要がありますが、多くの自治体では「乳幼児医療費助成制度」「小児医療費助成事業」などの名称で、子どもの医療費を助成する制度を設けています。

 

制度のポイント

 

助成の対象となるのは、中学生までとしている自治体が多いですが、東京都千代田区のように、一部高校生まで対象としている自治体もあります。

 

助成される範囲は通院のみ、入院のみ、通院・入院両方など各自治体で違いがありますが、健康診断、予防接種、差額ベッド代などの保険適用外のものは対象となりません。

助成額も自己負担額の全額としているところや、1回の自己負担額に上限を設けている自治体もあります。

 

利用方法は、お住まいの市区町村役場の担当部署に申請をして医療証の交付を受け、医療機関に提示することによって自己負担分の支払いが不要になるというケースが多いです。

 

家計に役立つ子どもの医療費助成。利用には親の所得制限を設けている自治体もありますので、まだ利用されていない方は、一度お住まいの市区町村役場の担当部署に制度利用の相談をしてみてはいかがでしょうか。

お金の価値と使う上で考えるべき大事なこと

1日の中でお金のことを1度も考えないで生活している人はほとんどいないと思います。

衣食住に必要な支払いや趣味のための支払い、ケガや病気の際の支払い、老後資金の蓄えなど、日々の暮らしの中で欠かすことができない道具です。家計だけではなく、企業や国の存続のためにもお金は必要で、現代社会のあらゆる場面に関わってきます。

 

暮らしや経済や社会にとって必要なお金ですが、私たちは必ずしもお金に対して合理的な決定をすることができるわけではありません。合理的な決定ができないと、必要なお金を失い、人生で叶えたい夢や希望が遠のいてしまう可能性もあります。

 

今回は、そんなお金についての価値を知るとともに、お金を使う上で考えなければいけない大事なことについてご紹介します。

 

お金の価値とは

 

生活する上で欠かすことが出来ないお金ですが、お金自体に価値はありません。お金を使うことで得ることができるモノやサービスの価値を表しているに過ぎません。遥か太古の時代では、欲しい物があれば物々交換をするしかありませんでした。お金はモノやサービスの価値を評価、交換しやすくする道具なのです。

 

お金のもつ特徴

 

お金自体に価値はありませんが、次のような特徴があるため、とても役に立ちます。

 

交換の手段として利用できる

お金と交換して自分の欲しいモノやサービスと交換できる

 

価値を測る尺度になる

違うモノやサービスをお金に置き換えることによって、価値を測ることができる

 

価値を貯める

食べ物などと違い腐ることはなく、今すぐに使わない分は貯めておき、必要なときに利用することができる

 

こうした特徴をもつお金があるからこそ、食べたいものを食べ、着たいものを着て、住みたい場所に住み、余暇を楽しみ、新しいことに挑戦し、専門性を高め希望する職に就き、万が一の場合や老後のために貯蓄をし、望む人生を送ることができます。

 

お金が生み出す問題

 

お金はほとんどどんなものとも交換することができますが、その特徴が大きな問題を引き起こすことがあります。それは、お金に関する決定、言い換えれば、お金の使い方についての問題です。

 

お金はほとんどどんなものとも交換できるといっても、欲しい物をすべて手に入れるわけにはいきません。お金を使うということは、欲しいモノやサービスを手に入れる代わりに、何か別のモノやサービスを手に入れることを諦めることと同じであることを必ず考えなければいけません。あるものにお金を使えば、そのお金は今もこれから先も、他の何かに使うことはできない、こうした考え方を機会費用といいます。

 

例えば、カメラが趣味の人が20万円のソニーの一眼カメラを購入する場合に、私が「ソニーのカメラを買ったら具体的にどんな製品やサービスを買えなくなりますか」と質問したとしましょう。

 

おそらく大多数の人は、「キャノンやニコンといった他に検討していた他社製品のカメラが買えなくなる」「交換式レンズが購入できなくなる」といった具体的に買おうとしているものの機会費用について答えると思います。

 

しかし、「家族での旅行をあきらめることになる」「レストランでの外食を我慢しなくてはいけなくなる」「購入を予定している住宅の頭金が少なくなる」「資格取得のための講座費用が足りなくなる」など、そのお金があればこの先あったであろう、いろいろな経験やモノの購入とを天秤にかけることが十分に機会費用を考えたうえでのお金の使い方になります。

 

機会費用を考えて賢く支出しよう

 

現代社会には、クレジットカードや電子マネー、住宅ローン、自動車ローン、スマホの分割購入など支出が将来に与える影響が分かりづらいものが多くあります。

 

日々の生活の中で、支出するたびに機会費用を考えるのは難しいことだと思いますが、例えば1ヶ月分のレシートを保存しておいて、自分のお金の使い方の事後チェックを行うことで、必要のない支出や本当にやりたいことや欲しい物のために諦めるべき支出などが浮かび上がってくるかもしれません。

 

賢く支出して、充実した生活や将来への蓄えにつなげていきましょう。

年金制度は役に立つ!ライフプランに活かす年金知識

毎月負担している年金保険料。会社員の人は給料から天引きされ、自営業者の人は毎月納付書や口座引き落としによって納付をしていると思います。

 

同じように毎月支払っているものに健康保険や国民健康保険健康の保険料があります。

こちらは、病気やけがをしたときに、3割の医療費負担で治療を受けられるため、支払いの意義を感じやすいです。

一方、年金保険料も毎月支払っているものの、年金受給は数十年先であることや、制度が難しいため、「なんだか良くわからないけど毎月支払っている」という人も多いと思います。

 

年金は、老後の生活を支えてくれる大切な資金源であると同時に、病気やけがによる障害や死亡によるリスクに備えることができる保険制度です。

 

年金制度はどういうリスクに備えることができるのか、どの程度年金を受給できるのかを知ることで、将来に対する不安を払拭できるとともに、ライフプランの作成に役立ちます。



公的年金制度とは



公的年金は国と日本年金機構が運営している年金制度です。老後の生活を支える年金以外に、事故などで障害を負ったときや、生活を支える人が亡くなったときなど、生活に困窮する場面で一定の給付を受けることにより、生活の安定を図ることができる社会保険制度です。

 

公的年金には2種類あり、20歳以上60歳未満のすべての人が加入する国民年金と、会社員や公務員の方が加入する厚生年金に分けられます。国民年金は対象の年齢であればすべての人が加入しますから、会社員や公務員の方は国民年金にも加入することになります。



国民年金の加入者



国民年金に加入している人のことを被保険者といい、保険料の収め方が異なる3つのタイプに分けられています。

 

◯第1号被保険者

20歳以上60歳未満の自営業者や農業者、学生、無職の人など第2号被保険者および第3号被保険者以外のすべての人が当てはまります。保険料は納付書、口座振替、クレジットカード、ペイジーによって、自分で納めます。最大2年の前払いが可能で、保険料の割引があり、お得に支払うことができます。

 

◯第2号被保険者

厚生年金に加入している会社員や公務員の方が当てはまります。国民年金の保険料は、厚生年金の保険料に含まれているため、厚生年金に加入すると自動的に国民年金に加入することになります。保険料の支払いは自分で行う必要はなく、毎月給料から天引きされ、会社が支払います。保険料は会社と折半して負担しています。

 

◯第3号被保険者

第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者(年収130万円未満)が当てはまります。保険料は扶養者が負担しているため、自分で納める必要はありません。



厚生年金の加入者

 

勤務先が厚生年金に加入していれば、そこで常用の70歳未満の人は自動的に厚生年金に加入することになります。加入できるのは、正社員だけに限られず、パートタイマーでも1週の労働時間および1ヶ月の労働日数が一般社員の4分の3以上である場合などは、厚生年金に加入することになります。

また、上記の条件を満たしていなくても、以下の条件をすべて満たす方は厚生年金に加入することになります。

 

・週の所定労働時間が20時間以上

・雇用期間が1年以上見込まれる

・賃金の月額が8万8千円以上

・学生ではない

・常時501人以上の企業(特定適用事業者)に務めている

 

保険料は給料から天引きされて、会社が納めますので自分で支払う必要はありません。

 

なお、会社から給料が支払われない産前産後休業期間や育児休業等期間中の保険料は免除されますが、年金受給の計算においては、保険料を納めたものとして計算されます。



公的年金で対応できる3つのリスク

 

年金は老後の生活資金であると思いがちですが、現役時代でも、病気やけがで障害を負ってしまったときは障害年金、一家を支える働き手が亡くなってしまったときは遺族の生活を守る遺族年金を受け取ることができます。

老後・障害・死亡という人生における3つのリスクに備えることができるのが、公的年金制度なのです。



老齢年金

 

人生100年時代といわれるほど、長寿化が進む現代において、長生きもリスクと捉えられる場面が出てきています。豊かな老後を送るためには生活を支える資金が必要です。その老後資金となるのが老齢年金です。

老齢年金は受給を開始すれば生涯受け取ることができるため、長生きリスクに備えることができます。

また、年金は物価や賃金の変動に応じて年金の支給額を改定しており、インフレのリスクにも対応しています。

 

老齢年金は原則65歳以降、生涯にわたり受け取ることができる年金で、国民年金からは「老齢基礎年金」、厚生年金からは「老齢厚生年金」が支給されます。老齢基礎年金、老齢厚生年金ともに、保険料を納めた期間が長いほど多くの年金を受け取ることができます。なお、老齢厚生年金は現役時代の報酬が高いほど受け取る年金額も多くなります。

 

老齢基礎年金を満額受給した場合、月額65,075円で年間780,900円です(令和3年4月分以降)。

厚生年金の受給額は、加入期間と給与の平均額によって年金額が変わります。正確な受給額を計算するのは難しいですが、目安として、平均給与が30万円で35年間加入した場合は、年間約73万円ほど受給できます。この受給額に国民年金の受給額を加えたものが受給できる年金額になります。

 

詳細に年金額を知りたい場合は、年1回届くねんきん定期便で確認してみたり、ねんきんネットで見込額を試算してみましょう。



障害年金

病気やけがによって働けなくなるリスクは誰にでもあります。働けなくなった場合に生活費の補填があるのとないのでは大違いです。こうした場合のリスクに備えることができるのが障害年金です。障害年金は手足などの外形上の障害だけでなく、うつ病や糖尿病、がんなど傷病名にかかわらず、生活や仕事が制限される一定の状態になった場合に請求することができます。

 

請求できるのは、障害の原因となった病気やけがの初診日に、国民年金または厚生年金の被保険者か、国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の方です。

 

ただし、初診日の前々月までの年金加入期間に3分の2以上保険料を納めている(免除を含む)か、前々月までの直近1年間に未納がないことが条件になります。

 

受給額は障害の重さによって1級から3級(3級は厚生年金のみ)に区分されており、障害基礎年金の2級は老齢基礎年金の満額と同額、1級はその1.25倍になります。

また、18歳までの子がいれば、加算額があります(第1子および第2子はそれぞれ年224,700円、第3子以降は年74,900円)。

 

障害厚生年金は勤続年数や収入によって変わってきます。例えば、平均月収25万円、加入期間10年の場合、障害厚生年金2級では年165,000円の受給となります。これに、一定の条件で配偶者加算(年224,700円)がつきます。



遺族年金

遺族年金は、亡くなった人に生計を維持されて遺族の生活を保障するための制度です。

残された家族の生活を支える遺族年金ですが、遺族年金をいくら受給できるかは、世帯の状況によって、大きく変わってくるので注意が必要です。

 

遺族基礎年金は子どもがいる年金加入者が対象で、子どもが18歳になった最初の3月末まで受給できます。金額は年780,900円で子の加算があります(障害年金の場合と同額)から子どもが1人の世帯であれば約100万円の受給になります。。

 

遺族基礎年金は夫と妻どちらが亡くなっても子どもがいる場合は受給できますが、遺族厚生年金は夫と妻どちらが亡くなるかで大きく異なります。

夫が亡くなった場合、妻は再婚しない限り原則終身で遺族年金を受給できます(65歳以降は本人の厚生年金に切り替わる可能性あり)。ただし、子どもがいない世帯では、夫が亡くなった時に妻が30歳未満の場合は、5年間しか遺族年金を受給することができないので注意が必要です。

 

妻が亡くなって場合は、子どもがいるかどうか、夫の年齢が55歳以上60歳未満かどうかで受給できるかどうか変わってきます。

例えば、子どものいない55歳未満の夫は、遺族厚生年金を受給することはできず、子どものいない55歳以上60歳未満の夫は、60歳から遺族厚生年金を受給できます。

 

遺族厚生年金の受給額は、亡くなるまでの平均収入と加入期間に応じて変わってきます。遺族厚生年金の受給額は亡くなった方の厚生年金の4分の3が原則です。

遺族厚生年金には、受給資格期間が25年以上ある被保険者が亡くなったことが条件のひとつになっていますが、支給条件を満たせば、25年未満の加入者でも、25年の加入とみなして計算されます。

 

年金知識をライフプラン作成に活かす

 

老後資金や障害・死亡に対するリスクは、残念ながら年金だけで対処するのは難しい部分があります。しかし、将来受け取る年金額や万が一の場合の年金受給額を考慮することによって、老後資金をいくら用意する必要があるのか、どの程度の保障を生命保険や医療保険で得ておく必要があるのかなどを判断することができます。

 

年金制度は内容が難しいですが、どういう年金があるのか、どういうときに受給できるのかなど基本的な仕組みを知ることによりリスクに備え、今後のライフプランに活かしていきましょう。